絵師の魂 渓齋英泉

クリエイターの葛藤と世間への想いを存分にぶつけた作品が書けました。
主人公の渓斎英泉は、妖艶かつ退廃的な美人画と多作した春画で文化文政期の江戸を風靡した浮世絵師です。『稀代の本屋』のために浮世絵や春画を取材して英泉と出逢い、いつかきっと彼のことを書かなきゃと決めていました。

英泉の描く美人画は、ひと眼みたら忘れられません。
緑の口紅を差した受け口ぎみの唇、ぼってりむっちりとした女体くねらせ、足の指はエクスタシーの瞬間のように曲がっている……。
圧倒的な迫力と独自の艶気はオンリーワンというにふさわしいものです。

物語は、英泉の浮世絵への野望と美人画のモデルへの思慕を軸に、私淑し父と慕う巨星・葛飾北斎、腹違いの三人の妹たちとの動静を軸に展開していきます。
絵師としての自信と不安の間に揺れ、世間の風向きに翻弄されつつ己のテーマを追う英泉。
曲亭馬琴、為永春水ら江戸の文化人たちも重要な役どころで登場します。

英泉はこれまで、女好きで軽薄な人物として描かれることが多かったのですが、私はそんな英泉像に納得できないでいました。ショッキングなほどオリジナリティあふれる艶冶な女を描いた絵師のクリエイティビティの源泉――それを突きとめようとペンを執りました。

ジャンル: 小説
出版社: 草思社
刊行: 2019年1月28日